アホウドリのその先の話

私は小笠原に来るまで、聞いたこともありませんでした。
アホウドリは、夏は北の海でお腹いっぱいご飯を食べて、冬になると小笠原やハワイなどに南下し、陸地で繁殖をする大型の海鳥です。
世界で約20種ほどいますが、北半球では4種のみ繁殖が確認されています。しかし、この4種を同時に観察できるのは世界でもここ小笠原だけなんです。
https://www.yamashina.or.jp/hp/yomimono/albatross/ahou_mokuji.html
人間のエゴによる捕獲によって悲劇のような運命を辿り、わずかに残っていた十数個体から70年以上かかってやっと数万羽までに回復しました。おがさわら丸航路近くにある伊豆鳥島が世界最大ですが、戦前は小笠原の島々にも繁殖地があったようです。
ただ、その最大繁殖地である鳥島は火山噴火の危険に常に晒されているため、新たな繁殖地を安全な小笠原に創生するプロジェクトが今も進行中です。
移住後に縁あって保護活動に加わり、いろいろな経験をさせてもらいました。
父島から漁船で4時間60キロ北にあり、電気も水も電波もない無人島聟島にのべ200日以上滞在して、アホウドリの観察調査してきました。民間会社から助成金を頂き、ハワイとニュージーランドの海鳥保護施設に見学に行かせてもらって意見交換したり、父島の小学生対象の総合学習に講師として教鞭に立ったり、小笠原ホエールウオッチング協会の機関誌に記事を書いたりと、私にとって非常に思い入れのある生き物です。
https://pacificrimconservation.org/
https://albatross.org.nz/
https://www.owa1989.com/owa/megaptera
アホウドリに関わらず、小笠原では多種多様な自然保全事業が行われていますが、目標に近づくには数十年、数百年という長いスパンで考える必要があります。そのため、結果が目に見えて出にくいのはしょうがないのですが、行政なり専門家なりの事業に対する評価が非常に重要です。ただ、一番大事にしなくてはいけないのは、島民が目標に少しでも近づけるんだという情熱を持ち続けることだと思っています。保護活動が長年に渡りたとえ世代が変わったとしても、島の生き物はここにしかいない宝に変わりはありません。
これから小笠原に来島の予定の方は、ぜひ唯一無二の島の自然を楽しんでいただきたいです。
ただ、この自然を守るために島民・行政・専門家が一生懸命頑張っていることも頭の片隅に入れておいて頂けると嬉しいです。
2025年04月11日 12:46